「うちの設備、まあ8割は動いてますよ」
工場を案内してもらったとき、生産管理の担当者はそう言った。ところが実際に1日分の記録を拾って計算してみると、出てきた数字は6割台だった。感覚と指標が食い違うのは、珍しいことではない。
この記事では、OEEの計算式と用語の定義を整理したうえで、実績を入れるだけで結果が出る計算ツールを用意しました。数字が比較できなくなる典型的な失敗もあわせて扱います。
OEE(設備総合効率)とは
OEE(設備総合効率:Overall Equipment Effectiveness)とは、設備が持つ生産能力を、どれだけ良品の生産に使えているかを%で表す指標です。設備が生産に使えたはずの時間のうち、どれだけが良品を作ることに使われたかを示す割合、と言い換えられます。
稼働率という言葉は、現場によって指す中身がばらばらです。その点OEEは計算方法が決まっているため、工程どうしの比較や、改善前後の評価に使えます。
OEEは3つの率の掛け算
OEEはTPM(全員参加の生産保全)の中で使われてきた指標で、設備の「止まらなかったか」「速さが出ていたか」「良品だったか」という3つの側面を掛け合わせて求めます。
OEE = 時間稼働率 × 性能稼働率 × 良品率
設備が止まっていないか(時間稼働率)、動いているあいだ本来の速さが出ているか(性能稼働率)、できたものが売り物になっているか(良品率)。この3つは直列につながっているので、掛け算になります。どれか1つが落ちれば、他が良くても全体が下がります。
足し算や平均ではない点が重要です。時間稼働率90%、性能稼働率95%、良品率99%という、それぞれ単体では十分に見える数字を掛け合わせても、全体では85%程度にとどまります。たとえば3つとも90%ちょうどなら、OEEは72.9%まで落ちます。
先に用語を固める
OEEの計算でつまずくのは式ではなく、時間の区分です。ここが人によって違うと、同じ設備でも数字が変わってしまいます。
負荷時間
就業時間から計画停止時間を引いた時間です。計画停止には、休憩、朝礼、計画的な保全、そもそも生産計画が入っていない時間が含まれます。「本来なら生産に使えたはずの時間」が負荷時間で、OEEはこの負荷時間を分母にします。
稼働時間
負荷時間から、実際に止まっていた時間を引いたものです。一般には故障、段取り・調整、刃具交換、立上りなどが該当しますが、段取り替えの扱いは工場によって分かれます。この点は後半の落とし穴で改めて触れます。
基準サイクルタイム
その設備が本来出せる、1個あたりの理論的な時間です。設計値やカタログ値、条件が整ったときの最速値を使います。実績の平均値を入れてはいけません。理由は後述しますが、ここを間違えるとOEEが機能しなくなります。
正味稼働時間と価値稼働時間
正味稼働時間は、基準サイクルタイムに生産数を掛けた時間です。作った数だけ本来かかるはずだった時間、と言い換えられます。価値稼働時間はさらに不良分を除いたもので、基準サイクルタイムに良品数を掛けて求めます。実際に売り物を作っていた時間が、これにあたります。
就業時間から価値稼働時間までの5つは、上から順に何かを引かれて短くなっていく入れ子の関係にあります。表にすると次のとおりです。
| 時間の区分 | 何を引くか | 意味 |
|---|---|---|
| 就業時間 | — | 1直あたりの拘束時間 |
| 負荷時間 | 計画停止時間(休憩・朝礼・計画保全) | 本来なら生産に使えたはずの時間。OEEの分母になる |
| 稼働時間 | 停止時間(故障・段取り・刃具交換・立上り) | 設備が実際に動いていた時間 |
| 正味稼働時間 | 性能ロス(チョコ停・速度低下) | 基準サイクルタイム × 生産数 |
| 価値稼働時間 | 不良ロス(不良・手直し) | 基準サイクルタイム × 良品数 |
負荷時間と稼働時間の違いが分かりにくいという声をよく聞きますが、間にあるのは計画外の停止です。休憩のように最初から生産しないと決めていた時間は負荷時間に入らず、故障のように予定になかった停止は負荷時間に入ったうえで稼働時間から外れます。そして一番下の価値稼働時間を負荷時間で割った値が、そのままOEEになります。

以上を使うと、3つの率は次のように書けます。
- 時間稼働率 = 稼働時間 ÷ 負荷時間
- 性能稼働率 =(基準サイクルタイム × 生産数)÷ 稼働時間
- 良品率 = 良品数 ÷ 生産数
OEE(設備総合効率)の自動計算ツール
1日分の実績を入力すると、OEEと3つの率、そして負荷時間がどのロスに消えたかまで表示されます。目標との差が最も大きい項目は自動で強調されます。
実際の数字で追いかける
ツールの初期値をそのまま使って、手計算をたどってみます。8時間勤務の1直で、次のような実績だったとします。
- 就業時間 480分、計画停止 60分 → 負荷時間 420分
- 停止時間 75分 → 稼働時間 345分
- 生産数 320個、うち不良 12個
- 基準サイクルタイム 55秒/個
時間稼働率は345 ÷ 420で82.1%です。性能稼働率は、55秒 × 320個で17,600秒、つまり293.3分が正味稼働時間ですから、293.3 ÷ 345で85.0%になります。良品数は320 − 12で308個ですから、良品率は308 ÷ 320で96.3%です。
掛け合わせると、0.821 × 0.850 × 0.963でOEEは67.2%。3つの率はいずれも8割から9割台なのに、総合すると7割を切ります。これがOEEを見る意味です。
エクセルで計算シートを自作する場合の注意点
毎日の記録として残すなら、エクセルで簡単な計算シートを作るのが現実的です。式そのものは単純ですが、実際に運用し始めると次の3点でつまずきます。
- 時間の単位を混ぜない。基準サイクルタイムは秒、就業時間や停止時間は分で記録することが多いため、計算前にどちらかへ揃えます。入力欄に単位を明記し、換算はセルの中で行うと入力ミスが減ります。
- ゼロ除算を止める。生産のない日や設備を止めた日は、負荷時間や生産数が0になって計算式がエラーになります。IFERROR関数で空欄を返すようにしておくと、月次で集計するときに表が崩れません。
- 性能稼働率が100%を超えたら気づける形にする。基準サイクルタイムか生産数の入力ミスが原因です。条件付き書式で100%超のセルに色を付けておけば、月末に見直す手間を減らせます。
あわせて、計画停止に何を含めるかをシートの上部に書いておいてください。担当者が代わっても同じ条件で記録を続けられます。
率ではなく時間で読むと、話が具体的になる
「性能稼働率が85%です」と報告しても、現場では何をすればいいか分かりません。同じ内容を時間に戻すと、議論が動きます。
先ほどの例で、負荷時間420分がどこに消えたのかを分解してみます。
- 価値稼働時間(良品を作っていた時間):55秒 × 308個 = 282.3分
- 停止ロス:75.0分
- 性能ロス:345 − 293.3 = 51.7分
- 不良ロス:55秒 × 12個 = 11.0分
4つを足すと420分、ちょうど負荷時間に戻ります。そして価値稼働時間282.3分を負荷時間420分で割ると67.2%、3つの率を掛けて求めたOEEと一致します。解説書によってOEEの計算式が2通り出てくるのは、このためです。どちらから入っても同じ数字にたどり着きます。

この形にすると、「チョコ停と速度低下で52分が消えている」という言い方ができます。率で語るより、改善の当てどころがはっきりします。
どの率が低いかで、疑うロスが絞れる
TPMでは設備のロスを7つに分類します。この7大ロスは、3つの率のどれを下げるかで整理できます。
| 下がっている率 | 疑うロス | 現場で見る場所 |
|---|---|---|
| 時間稼働率 | 故障ロス/段取り・調整ロス/刃具交換ロス/立上りロス | 停止の記録、段取り替えの回数と所要時間 |
| 性能稼働率 | チョコ停・空転ロス/速度低下ロス | 設備の設定速度、短時間停止の頻度 |
| 良品率 | 不良・手直しロス | 検査記録、手直しにかかった工数 |
先ほどの例を、冒頭で挙げた90%・95%・99%という目安と照らしてみます。差が最も大きいのは性能稼働率でした。つまり疑うべきは、故障や段取りではなくチョコ停と速度低下ということになります。
目標85%をどう扱うか
OEEの目標としてよく挙がる85%は、ここまで目安として使ってきた3つの値を掛けたものです。世界最高水準の目安とされる値であって、測り始めた時点の目標として現実的な数字ではありません。
中小製造業でOEEを導入する場合、最初にやるべきは85%を目指すことではなく、自社の基準値を作ることです。同じ定義で3か月測れば、品種や曜日による差も含めた自分たちの現在地が見えます。改善の成否は、他社の水準ではなく自社の推移で判断するほうが確実です。
数字が比較できなくなる3つの落とし穴
基準サイクルタイムに実績の平均を入れてしまう
影響が大きく、しかも気づきにくい間違いです。基準サイクルタイムに直近の実績平均を入れると、性能稼働率は常に100%近くになります。実績を実績で割っているだけなので当然です。
この状態でOEEを出すと、性能ロスがゼロに見えます。本当は速度低下やチョコ停が起きているのに、指標がそれを打ち消してしまいます。しかもOEE自体は悪くない数字が出るため、問題があること自体に気づけません。基準サイクルタイムは設計値や理論値を使い、一度決めたら簡単に変えないでください。

計画停止の線引きが工程ごとに違う
先ほどは段取り替えを停止時間として挙げましたが、これを計画停止に入れている工場もあります。この扱いひとつで時間稼働率は大きく変わります。計画停止に入れれば負荷時間そのものが減るので、数字は良くなります。
どちらが正しいというより、社内で定義を固定して文書に残すことが重要です。定義が揃っていない状態で工程間の数字を並べても、比較になりません。改善活動として他部署と数字を突き合わせる予定があるなら、測り始める前に決めておいてください。
チョコ停が記録から抜け落ちる
数十秒から数分の短時間停止は、日報に書かれないことがほとんどです。書く手間のほうが停止時間より長いからです。結果として停止時間には現れず、性能ロスとして間接的に出てきます。
裏を返せば、停止時間の記録は少ないのに性能稼働率が低いという組み合わせは、チョコ停を疑う根拠になります。上のツールで停止ロスと性能ロスを分けて表示しているのは、この読み方をしてもらうためです。
測り続けられる仕組みにする
OEEは1回測って終わりでは意味がありません。改善前後の比較と推移の把握が目的なので、毎日同じ手順で取れることが前提になります。
ただし、手書きの日報で毎日取り続けるのは負担が大きくなりがちです。特にチョコ停は、人手では記録しきれない種類のデータです。設備の信号を直接拾う、あるいは稼働状況を自動で記録する仕組みがあると、OEEは日次で追える指標になります。
この段階に進むなら、設備稼働のIoT可視化やアンドンによる稼働状況の見える化が具体的な選択肢になります。まずは1台の設備でOEEを手計算し、どのロスが大きいかを掴んでから投資を検討する順序をおすすめします。
まとめ
OEEは時間稼働率、性能稼働率、良品率の掛け算です。押さえるべきは、負荷時間と基準サイクルタイムの定義を先に固めること、そして率を時間に戻して読むことの2点になります。
上のツールは1日分の実績があればすぐ計算できます。まずは気になる設備1台から、1週間分の数字を並べてみてください。感覚と指標のズレが見えたところが、改善の入口です。

