工場のWi-Fiが途切れる原因と対策|安価なメッシュWi-Fiで電波の死角を埋める方法

工場のWifiでスムーズにタブレット操作する作業員 工場見える化・IoT

せっかく現場にタブレットを導入したのに、機械の裏や倉庫の奥に行くとWi-Fiが切れて画面が固まる。電波の入る場所までわざわざ戻る作業員の姿を見て、肩身が狭くなっていないでしょうか。

「紙の方が早かった」という現場の声と、進めたいデジタル化の方針。その板挟みのなか、本格的なネットワーク工事の予算も出ない。

そんな状況でも、工事不要で試せる方法があります。

この記事でわかること

  • 工場でWi-Fiが切れる「金属壁」と「ノイズ」という2つの原因
  • 安易な「中継機」がハマりやすい失敗パターンと、メッシュWi-Fiとの違い
  • 市販のメッシュWi-Fiセットをオイルミストや鉄粉から守る現場の工夫

工場でWi-Fiが切れるのは「家と違う電波環境」だから

自宅やオフィスで使っていたルーターを工場に持ち込んでも、電波が安定しないのは当然です。工場には、住宅やオフィスにはない電波の障害物とノイズ源が集中しています。

金属製の壁・棚・入り組んだレイアウトが電波を遮る

Wi-Fiの電波は、金属に当たると大きく反射・減衰します。工場には鉄骨の壁、スチール棚、金属製の機械本体、シャッターなど、電波を遮る要素がいたるところにあります。

事務所からは電波が届いていても、間に大型機械や金属棚が一枚挟まるだけで、倉庫の奥や機械の裏側は「電波の死角」になりやすいのです。

モーター・インバーターなどの設備がノイズ源になる

もう一つの要因が、設備から出る電気的なノイズです。モーターやインバーター、各種センサー類など、稼働中の機械設備は電磁的なノイズを発生させることがあり、これがWi-Fiの電波と干渉して通信を不安定にします。

「事務所では繋がるのに、ラインの近くだけ調子が悪い」なら、この設備ノイズの影響が疑われます。

2.4GHzと5GHz、どちらも工場には一長一短

Wi-Fiには主に2.4GHz帯と5GHz帯の2つの周波数帯があり、得意・不得意が異なります。

2.4GHz帯は障害物を回り込みやすい一方、Bluetoothや産業機器など多くの機器と帯域が重なり、ノイズに弱いのが弱点です。

5GHz帯はノイズに強く安定しやすい反面、金属や壁などの障害物に弱く、遠くまで届きにくい性質があります。

「障害物が多いから2.4GHz」とも「ノイズに強いから5GHz」とも言い切れず、工場のレイアウトや設備配置で向き不向きが変わります。

「家庭用ルーターを増やせばいい」が落とし穴になる理由

電波が届かないなら、もう1台ルーターを置けばいい——多くの現場がまず考える方法です。実際に安価な「中継機」を設置した工場も少なくありません。

ところが、ここでよくハマる沼があります。

端末が「遠くの弱い電波」を掴みっぱなしになる失敗談

中継機で電波の範囲を広げたつもりでも、タブレットや端末は「一度繋がった電波を律儀に掴み続ける」ことがあります。作業員が中継機の近くまで移動しても、端末は遠くの弱い電波(元のルーター)を掴みっぱなし。結局、通信がブチブチ切れて使い物にならなかった——よく聞く失敗談です。

これは、「電波が届く場所を増やす」ことと「移動に応じて最適な電波へ自動で繋ぎ直す」ことが、別の機能だからです。中継機は前者には対応していても、後者が不十分なため、こうしたトラブルが起きやすいのです。

「中継機」と「メッシュWi-Fi」の仕組みの違いを3秒で確認

どちらも「電波を広げるもの」に見えますが、仕組みは違います。移動しながら端末を使う工場の働き方に合うかどうかで見比べてみましょう。

中継機メッシュWi-Fi
仕組み親機の電波を受け取って再送信するだけ複数台が連携し、1つの大きなネットワークを構成
移動時の繋ぎ直し端末側の判断に依存(弱い電波を掴みっぱなしになりがち)一番強い電波へ自動で切り替わりやすい
工場での向き不向き定点での電波増強には向く移動の多い現場・ハンディ端末向き

移動しながらタブレットやハンディ端末を使う現場には、中継機よりメッシュWi-Fiの方が噛み合いやすいといえます。

工場のネットワークの現実|有線と無線の役割分担

本格的なネットワークを考える前に、工場の実態を押さえておきましょう。

基幹は「有線LAN」で組まれているのが普通

多くの工場では、安定性が必要な機器の通信はノイズに強い「有線LAN配線」で組まれています。生産管理システムが入った事務所の社内サーバーや、加工機に直接プログラムを送る制御用PCなど、工場の心臓部となる重要な機器は、配線の手間をかけてでも有線で繋ぐのが基本です。

「持ち歩く機器」だけは無線に頼るしかない

一方、タブレットやハンディスキャナのように「持ち歩く機器」には、有線ケーブルを繋げません。だからこそWi-Fi(無線)が必要になり、その分どうしても死角が生まれます。

無線の「本来の正解」は産業用Wi-Fi機器だが、現実的ではない

では、その「死角」を埋める無線には何を選ぶべきか。本来であれば、MOXAやコンテックといったメーカーが出している「産業用アクセスポイント(耐環境モデル)」や、バッファロー等の法人向け耐環境モデルを導入するのが筋です。

ただし、これらは機器単体でも数万円〜十数万円が一般的で、ネットワーク業者(SIer)に設計や配線工事を依頼すれば、総額で数十万〜数百万円規模の予算が必要になることも珍しくありません。「予算が出ない」と悩む中小工場が、効果も分からない段階でこれを狙うのは現実的ではないでしょう。

だから「死角だけを市販品で試す」が現実的な一手になる

無線側にまで何百万円もかける必要はありません。まずは2万円台の市販メッシュWi-Fiで「本当に無線が必要な死角」だけを低コストで検証する。効果が確認できれば、そのときに産業用機器への投資を会社に提案すればいい。この順番のほうが、よほど理にかなっています。

スモールスタートの具体策|市販のメッシュWi-Fiを「ポン置き」して検証する

具体的に何を使えばいいのか。Amazon等で買える市販のメッシュWi-Fiセットなら、ポン置きするだけで試せます。

具体例として、バッファロー製のWi-Fi 6(11ax)対応メッシュWi-Fiセット「WNR-3000AX4」シリーズのペアリング済み2台セットは、2万円台前半で展開されています。ルーターと中継機がペアリング済みで同梱されているため、箱から出して接続するだけでメッシュ環境を試せる手軽さがあります。

「電波を無限に強くする」ことはできない

知っておきたい客観的な事実があります。日本の電波法では、免許不要の無線LAN機器の送信出力に上限があり、国内で正規販売されているルーターはこの範囲内に設定されています。つまり、1台の出力を上げて「電波を無限に強くする」ことは制度上できません。

だからこそ、1台の高性能ルーターで全体をカバーするのではなく、複数台を分散させて「面」でカバーする発想が現実的です。メッシュWi-Fiは、まさにこの考え方に基づいた仕組みです。

現場の裏技「タッパー密閉法」|ルーターをオイルミストや鉄粉から守る

「ポン置き」で最大の悩みになるのが工場特有の環境です。市販ルーターは、オイルミストや粉塵、高温といった過酷な環境での長期稼働を保証していません。加工油や鉄粉が飛ぶエリアに直接置くと、想定より早く壊れる可能性があります。

100均のプラスチック製タッパーで簡易保護カバーを作る

そこで現場で使われているのが、100均などで手に入るプラスチック製の密閉タッパーをルーターの保護カバー(防塵ケース)として代用し、本体を収納する工夫です。簡易的な検証用として、次のポイントを押さえましょう。

  • LANケーブルの通し穴:側面にケーブルが通る穴を開け、隙間からのオイルミストや粉塵の侵入を防ぐためゴムグロメット等でふさぐ。
  • 設置の高さ:オイルミストは下に溜まりやすいため、壁面など1.5m以上の高い位置に設置する。
  • ケースの材質:プラスチックは電波を通すので影響が少ない。金属ケースは電波を遮るため使わない。

【重要】完全密閉は熱暴走・故障のリスクがあります

ルーターは稼働中に発熱します。完全密閉すると熱がこもり、熱暴走や故障の原因になります。タッパーの底面や側面に必ず複数の通気穴(スリット)を開け、排熱を確保してください。とくに夏場は温度が上がりやすいため、設置後しばらくは本体が異常な熱を持っていないか確認しましょう。

※なお、この方法はメーカー保証の対象外となるDIY(自己責任)です。あくまで「検証用の仮設」と位置づけ、長く使う前提なら、防塵・防滴性能を備えた専用筐体や産業用機器への切り替えが安全です。

現場での活用事例

ある金属加工の現場では、タブレットでの在庫確認や記録作業を始めたものの、材料倉庫の奥でタブレットが頻繁にエラーを起こしていました。倉庫と事務所の間には金属製のラックが並び、電波が遮られていたのが原因と考えられたため、メッシュWi-Fiを倉庫内にも1台追加。エラーの頻度が下がり、現場の不満も落ち着いたといいます。

別の食品工場では、ライン作業者のハンディ端末が、機械の裏側に回ると通信が途切れていました。中継機では改善しなかったため、メッシュWi-Fi方式に切り替え。端末が移動先で電波を自動的に切り替えるようになり、ライン上での操作が滞りにくくなったといいます。

どちらも、大掛かりな工事をせず、市販品の検証から始めている点が共通しています。

試す前に知っておきたい注意点

「絶対に解決する」とは言い切れません。工場のレイアウトや設備環境で効果の出方は変わります。あくまで「現状より改善するか、低コストで検証する」スタンスで取り組むのがよいでしょう。

なお、タブレット自体の防塵・防滴対策や導入全体の進め方は、別記事「工場iPad導入|壊れる・汚れるを防ぐ防塵ケース選びと運用術」で詳しく解説しています。端末側も見直したい場合はあわせてご確認ください。

まとめ|まずは「電波の死角」をメッシュWi-Fiで検証する

工場でWi-Fiが切れる背景には、金属の壁や棚、設備のノイズ、電波法の出力制限という構造的な要因が重なっています。1台を高性能にすれば済む話ではなく、「複数台で面をカバーする」発想への切り替えが近道です。

明日からの第一歩は、工場内を歩いて「実際に電波が切れるポイント」を洗い出すこと。そのうえでメッシュWi-Fiを1セット用意し、環境が厳しい場所は通気穴を開けたタッパーで簡易保護しながら試験導入してみてください。工事も大きな予算もなく、死角が埋まるかどうかを検証できます。

⚠️ 製品のご購入・導入に関するお願い

本記事で紹介しているツールや機器などは、工場のインフラ環境(電圧の違い、Wi-Fi電波の届きやすさ、PLCの仕様など)によって適合可否が異なります。
ご購入の際は、必ず事前にメーカーの公式サイトやカタログ等で仕様をご確認いただき、ご自身の現場環境に適合するかをご判断のうえ導入をお願いいたします。

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