【台湾進出】中小製造業の台湾への販路開拓は半導体サプライチェーンを狙え|TSMC以外の「3つの売り先」

台湾への半導体販路開拓 市場動向・トレンド

「台湾の半導体が熱い」。そんな報道を目にして、自社の精密部品や治具、検査機器も売り込めないかと考えた方は多いはずです。

結論からお伝えすると、狙うべきは半導体受託製造で世界最大手のTSMC本体ではなく、その周辺に広がるサプライチェーンです。入口になるのは「①台湾に拠点を持つ日系商社・日系装置メーカー」「②台湾ローカルの中堅装置・部品メーカー」「③後工程・テスト受託企業(OSAT)や保守メンテナンス系のサプライヤー」という3つの売り先です。

この記事では、次の3点を解説します。

  • TSMC以外に狙うべき「3つの売り先」と、それぞれの客先ニーズ
  • 技術・品質の「足切りライン」(SEMI規格・クリーンルームの清浄度)
  • 台湾の商習慣(連絡はLINE、信頼は対面)と、最初の接点の作り方

なぜ台湾なのか|国内は狭き門、台湾は「日本頼み」の巨大市場

そもそも、なぜ国内ではなく台湾なのか。国内の半導体サプライチェーンは、一次請け・二次請けの取引関係が長年かけて固まっています

どの装置メーカーが、どの部品会社に発注するか。その組み合わせはすでに決まっており、新規に食い込む余地は大きくありません

入り込めるとすれば、装置や部品の開発初期から一緒に組むか、既存のサプライヤーが供給や品質でつまずいたときに切り替え先として声がかかるのを待つか。どちらも狭き門です。

一方の台湾には、TSMCを筆頭とするファウンドリ(半導体の受託製造企業)を中心に、ウエハー(ウェーハ)に回路を作り込む前工程の世界的な集積があります。世界の最先端半導体の多くが台湾で製造されており、装置・材料・部品・保守サービスまで含む巨大なサプライチェーンが広がっています。

市場規模の面でも、台湾は半導体材料の消費市場として長年世界最大の座を保ち、製造装置への投資額でも中国・韓国と並ぶ世界トップ3の一角を占めています(SEMI=国際半導体製造装置材料協会調べ)。

注目すべきは、この巨大市場が高純度素材・基幹部品・特殊加工を日本からの調達に依存している点です。高精度加工、ニッチな素材・部材、精密治具、歩留まり改善につながる検査・計測技術など、日本の中小製造業の強みが正当に評価されやすい土壌があります。

国内は飽和状態で新規参入が難しい領域でも、台湾では「探していたもの」として迎えられる余地があります。台湾に活路を求めるのは、中小製造業にとって理にかなった生き残り策なのです。

販路候補となる国・地域の全体像は、別記事『中小製造業の海外進出はどこがいい?「高く売れる国」の選び方と成功・失敗事例』で紹介しています。本記事は台湾に絞って、「どこに・どう売り込むか」を掘り下げます。

【要注意】台湾参入でやりがちな3つの失敗

まずは、台湾で予算と時間を無駄にしがちな「つまずきの型」を押さえておきましょう。

失敗1:大手への直接営業が「サプライヤー登録の壁」で止まる

展示会に出展して大手メーカーの購買担当者と名刺交換し、「いける」と手応えを感じて提案を持ち込む。ところが商談を進めようとした矢先、取引の前提となるサプライヤー登録の要件が示されます。

RBA(責任ある企業同盟)の行動規範への準拠や、第三者機関による監査などが求められるケースもあり、中小単独では応えきれない水準だと判明する。結局、展示会の出展費と、商談のための出張費・書類の翻訳費だけがドブに消えるパターンです。

失敗2:SEMI規格を知らずに、最終選定で外される

現地の装置メーカーから引き合いを得たのに、仕様を詰める段階になってSEMI規格(S2等)への対応や、それを示す資料がないことが判明。エンドユーザーの工場に導入できないと判断され、採用が見送られるパターンです。

失敗3:「完璧なメール」を作っている間に、発注が他社に流れる

台湾では、日々のビジネス連絡をLINEで進めるのが一般的です。見積もりや仕様変更の依頼に対し、日本側が社内の確認と資料づくりを重ね、数日かけて完璧なメールを返す。

その間に、LINEで即答した競合他社へ発注が流れる。「返事が遅い=やる気がない」と見なされてしまうのです。

3つに共通する原因は、「誰に売るか」「何を求められるか」「どう進めるか」という台湾側の事情を知らないまま、国内と同じ売り方を持ち込んだことです。次章から順に見ていきます。

【本題】狙うべき「3つの売り先」|TSMC本体ではなく、その周辺へ

失敗1で見たとおり、TSMCのようなメガファブ(巨大な半導体工場)との直接取引は、厳格なサプライヤー登録と監査を通す必要があり、中小単独で最初から狙うルートとしては現実的ではありません。そこで発想を変え、「すでに口座を持っている相手」を入口にする。これがベースとなります。

狙うべき売り先は、次の3つに整理できます。売るものも、客先が求めているものも異なるため、自社製品がどこに合うかで準備の中身が変わります。

狙う売り先売るもの・役割客先の主なニーズ
①台湾に拠点を持つ日系商社・日系装置メーカー部品・治具・材料の供給日本と同水準の品質・図面対応を、台湾側でも確保したい
②台湾ローカルの中堅装置・部品メーカー基幹部品・特殊加工を担うパートナー自社で作れない基幹部品・特殊加工に対応できる相手に任せたい
③後工程・テスト受託企業(OSAT)・保守メンテナンス系サプライヤー治具・検査機器・消耗品・搬送まわり稼働中の装置の保守・定期交換品を、安定供給・短納期で調達したい

①は、言葉と商習慣のハードルが最も低い入口です。付き合いのある商社・メーカーが台湾に拠点を持っていれば、その担当者経由でつないでもらうのが最短。接点がなければ、現地法人へ直接問い合わせる手もあります。

日系装置メーカーの場合は、エッチング装置の東京エレクトロン、洗浄装置のSCREEN、切断・研磨装置のディスコ、テスト装置のアドバンテストのように、台湾に現地法人を構える会社が少なくありません。しかも部品の購買窓口は日本本社側にあり、商談が国内で完結するケースもあります。窓口は国内でも、部品が載るのは台湾のライン。海外取引が初めての会社でも動きやすく、図面への対応力と納期の確実さ、国内での取引実績がそのまま信用になります。

②の台湾ローカル中堅メーカーは、技術力はあっても、基幹部品・素材・特殊加工を日本に依存しているケースが少なくありません。自社を「下請け」ではなく、基幹部品・ユニットを任されるパートナーとして位置づけて食い込むアプローチ方法です。重要になるのは、対応の速さと英語の技術資料です。

③は、装置が動き続ける限り発生する定期交換・保守の継続需要を狙えるのが特徴です。台湾には後工程受託で世界最大手のASE(日月光)などが本拠を置き、その周辺に治具・消耗品・保守部材の需要が広がっています。単発の装置案件と違い、一度入れば取引が続きやすい領域で、安定供給と短納期が評価されます。

3つに共通するのは、現地パートナーの口座を通して、エンドユーザーのラインに自社の部品を乗せるという商流です。直接口座を開けなくても、大手の製造ラインに自社製品が組み込まれていく。中小製造業にとって現実的なルートです。

そのうえで必要になるのが、自社の立ち位置の言語化です。これまで日本向けに培ってきた自社の技術が、どんな歩留まり・品質課題に効くのか。ここが言葉になってはじめて、狙う売り先も、そろえる資料も決まります。

技術・品質の「足切りライン」|SEMI規格とクリーンルームの清浄度

失敗2の背景にあるのが、価格交渉より前に「そもそも土俵に乗れるか」を決める足切りラインです。代表格が、SEMI規格とクリーンルームの清浄度です。

これは台湾特有のルールではなく、世界の大手半導体工場に共通する要件です。ただ国内の長年の取引では、規格対応を取引先が担っていたり、図面と慣行の中に溶け込んでいたりして、意識せずに済んでいた会社も多いはず。新規の海外取引では、それが文書で明示的に求められます

SEMI S2は、半導体製造装置の環境・健康・安全に関する国際的なガイドラインです。法律のような強制力はないものの、装置の購入仕様に組み込まれる形で効力を持ち、大手ファブ向けの装置・周辺機器では事実上の必須要件とされています。

注意したいのは、装置本体として納めるのか、装置に組み込まれる部品として納めるのかで、要求のかかり方が異なる点です。第三者評価機関の評価レポートなどで対応状況を示すよう求められることもあります。自社にどのレベルの対応が必要かは、取引先や第三者評価機関に早い段階で確認しておきましょう。

もう1つがクリーンルームの清浄度です。ISO 14644-1はクリーンルームの清浄度クラスを定めた国際規格で、最先端のラインほど、より厳しい清浄度クラス(数値の小さいクラス)が求められます。

そこに納める部材には、加工精度に加えてパーティクル(微粒子)の発生やアウトガス(材料から放出されるガス)の抑制も求められます。材質選定・洗浄・梱包までが要求水準に入るケースもあります。

規格対応はコストにしか見えないかもしれません。しかし見方を変えれば、競合がふるい落とされる参入障壁でもあります。越えてしまえば、その壁は今度は、自社を単純な価格競争から守る側に回ります。

台湾の商習慣|連絡はLINE、信頼は対面

技術・品質の土俵に乗れても、商習慣の違いで商談を落とすのが失敗3でした。台湾の商習慣は「スピード」と「人脈」の2つで押さえましょう。

スピード|即断即決とLINE文化

台湾企業はトップダウンの意思決定が多く、決裁者が商談の場に出てくれば話は早く進みます。裏を返せば、返答の遅い相手は「やる気がない」と見なされやすいということです。

日々の連絡手段も特徴的です。日本ではビジネスの連絡といえばメールが基本ですが、台湾のBtoBでは日常のやり取りにLINEを使うのが主流。展示会で名刺交換をしたら、その場でLINEも交換するのが通例です。

正式な見積書・契約・仕様書はメール、日々の仕様調整・進捗確認・質問はLINE。これが使い分けの基本形です。

商談のスピードに置いていかれないために、次のような備えが考えられます。

  • 商談用のLINEアカウントを用意する
  • 結論が出ていなくても、即日の一次回答(受領連絡+回答期限の提示)を徹底する
  • 回答に時間がかかるときは、途中経過をLINEで小まめに共有する
  • 見積書・仕様書の英語テンプレートを整備しておく
  • 誰がどこまで即答してよいかを決め、社内の決裁ルートを短くしておく

人脈|「グアンシ(關係)」が取引の前提になる

台湾の商習慣で欠かせないのが、人と人との信頼関係・人脈を重んじる「グアンシ(關係)」という考え方です。「この会社と取引できるか」より前に、「この人となら仕事ができるか」が問われる。そう捉えると分かりやすいでしょう。

だからこそ、初対面の相手といきなり口座が開くことは多くありません。顔を合わせ、技術を見せ、やり取りを重ねるほど話が前に進む。商社やJETRO(日本貿易振興機構)、既存取引先からの紹介ルートが効くのも、同じ理由からです。

最初の接点はどう作る?|紹介・Web・展示会の使い分け

では、その最初の接点はどう作るのか。ルートは1つではありません。

  • 商社・既存取引先からの紹介:グアンシ(信頼)の文化と最も相性がよく、相手の信用を借りて入れる
  • Web経由の引き合い:翻訳ツールの普及もあり、英語・繁体字の製品ページから直接問い合わせが届くことも
  • 展示会:実物・実機をその場で見せられるルート

この中で新規開拓の突破口になりやすいのが展示会です。名刺集めの場ではなく、信頼(グアンシ)の起点であり、実機デモで技術を証明する場と位置づけ直しましょう。

とはいえ、いきなりの台湾出張・単独出展はハードルが高いもの。まずはSEMICON Japan(例年12月・東京)で、日系商社・装置メーカーや台湾企業の出展ブースを回って接点を作り、手応えがあればその場でLINE交換まで持ち込むのが現実的です。

反応が得られたら、まずは来場者としてSEMICON Taiwan(例年9月・台北)へ。

動き出す前に、商習慣や契約実務をJETROなどに確認しておくと安心です。初めて輸出に挑戦する企業向けには、JETROなどが連携する「新規輸出1万者支援プログラム」のような無料の支援制度もあります。SEMI規格への対応の要否は、取引先や第三者評価機関に確認しましょう。

よくある質問(FAQ)

中国語ができなくても台湾に売り込めますか?

台湾の半導体業界は海外との取引が多く、ビジネスの場では英語が通じる場面が多いとされます。日系商社経由なら日本語で進められるケースもあります。日々のやり取りには翻訳ツールの併用も現実的な選択肢で、選び方は別記事『工場で使える翻訳ツール・通訳デバイス比較|現場の4つの壁を越える選び方』で紹介しています。

台湾企業のスピードについていけるか不安です。

求められるのは「完璧な回答」より「速い一次回答」です。受領連絡と回答期限の提示は日本でも当たり前ですが、台湾ではそこに加えて、LINEでの小まめな進捗共有(「いま社内で仕様を確認中です」といった一言)が信頼につながります。

SEMI規格に対応していないと取引できませんか?

装置としてファブに納めるなら、事実上の必須要件です。部品・消耗品として納める場合は、装置メーカー経由で求められる内容が変わるため、提案の初期段階で相手先に確認しましょう。

半導体業界の実績がなくても、台湾に売り込めますか?

正直なところ、ハードルは高めです。台湾の半導体サプライチェーンは要求水準が世界でも指折りに厳しく、規格対応や品質保証の実績が前提になるためです。他業界で強みを持つ会社なら、まずその技術が評価される市場から始めるのが定石です。国・地域の選び方は別記事『中小製造業の海外進出はどこがいい?「高く売れる国」の選び方と成功・失敗事例』で紹介しています。

なお、工場の自動化・省人化ニーズを軸に売り込む場合は東南アジアが狙い目です。東南アジアの販路開拓については、別記事『東南アジアの販路開拓、製造業が狙うべき国はどこ?──「売り先市場」で見る3カ国と、日系・欧米系の工場に食い込む商流の作り方』で紹介しています。

まとめ|明日できるファーストステップ

台湾市場のポイントを振り返ります。

  • 狙うのはTSMC本体ではなく、台湾に拠点を持つ日系企業・台湾ローカル中堅・OSAT等の「3つの売り先」
  • SEMI規格・クリーンルームの清浄度への対応の要否を早めに確認する
  • LINEでの即応グアンシ(人脈)づくりが商談を左右する

明日できるファーストステップは、「これまで日本向けに培ってきた自社の技術が、どんな歩留まり・品質課題に効くのか」を書き出すことです。展示会のブースでもJETROの相談窓口でも、最初に問われるのはこの1点です。書き出せたら、SEMICON Japanの開催情報の確認と、JETROへの相談に進みましょう。

⚠️ 製品のご購入・導入に関するお願い

本記事で紹介しているツールや機器などは、工場のインフラ環境(電圧の違い、Wi-Fi電波の届きやすさ、PLCの仕様など)によって適合可否が異なります。
ご購入の際は、必ず事前にメーカーの公式サイトやカタログ等で仕様をご確認いただき、ご自身の現場環境に適合するかをご判断のうえ導入をお願いいたします。

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